≡ヴァニティケース≡
「そう、ぐずぐずしちゃいられないのよ。もうこうなったら、この町を出るしかない」
そう呟いてから検索範囲を全国に広げてみた。思いのほか声が大きかったのか、隣席に座っていた初老の男に怪訝そうな視線を送られる。昼間からハローワークに居るくらいだ。彼も仕事に困窮しているのだろう。視界の隅で窺ってみたが、やはり疲れた表情をしている。しかし、今は他人のことなど構ってはいられない。
すると、暫く砂時計を表示させていた画面が不躾に検索結果を反映させた。
「これよ……こういうのが欲しかったのよ!」
いくつかのページに目を通すうち、その中の或る求人が美鈴を吸い寄せるように惹き付けた。場所は京都と、東京からはかなり離れていたが、詳しく読めば医療事務資格の取得勉強をしながら働けるという。