≡ヴァニティケース≡

「支度金も無利子で貸してくれる条件だし、そうね……水が合わなかったらそれこそ水商売をすればいいかも。幸いなことに京都には知り合いがいないから、最悪はそれでも構わないわ」


 努めて前向きに考えてはみたものの、しかし就職の内定はあくまでも企業の担当者が決めることだ。どれだけ美鈴が優秀な人材であったとしても、それが相手に伝わらなければ意味がない。誰がどう足掻いたところで合否を峻別するのは履歴書と面接の印象だ。全ては第一印象で決まると言っていい。今はまだ楽観視していい段階ではない。


しかし美鈴の心には、何か確信めいたものが宿っていた。


「あんまり期待なんかして、後でガッカリするのも嫌だけど……何故かしら。ここでなら働ける気がする。……いけないいけない! 捕らぬ何とかの皮算用だわ」



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