ジェフティ 約束
 ダルクは内心、息子の成長に笑みを浮かべずにはいられなかった。体も大きくなり、広範囲に動けるようになり、いつの間にか今までできなかったことを軽々と乗り越えていく。その逞しさ、そのしなやかさ。小さく柔らかだった体が成長し、今、目の前で雪を蹴散らしながら駆けて行く。
 ダルクは獣道から動かず、状況を見守ることにした。


 ラルフの足元の雪は、時折きらりと光を跳ね返し、宝石の粉を撒き散らしたように無数に光っていた。気温が低いため、雪の感触はさらさらの砂のようだ。
 森の常緑樹に降り積もった雪で、頭上の空間は埋まり、獣道から一歩踏み込んだだけでもそこは光が届かず薄暗い。ラルフは雪を踏みしめて歩きながら、マントの中にしみこんでくる冷気にぶるっと身震いした。
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