ジェフティ 約束
 ――だから黙れと言ったのか。
それにも気がつけなかった自分が恥ずかしい。
 とたんに馬の鼻息と自分の鼓動が大きく耳を打ち始めた。口の中が一気に乾いて、汗がこめかみから滴り落ちる。草原を緩やかにすべる風の音も、まるで肌を刺すように感じられた。

 頭上を舞う一羽の鳥が、鋭く鳴く。

 その時、馬が大きく体を跳ね上げ嘶いた。突然の馬の行動に、ラルフは不意を突かれ跨っていた背中から落ちそうになり、鬣を握り締めて必死にしがみついた。激しく足をばたつかせる馬の鼻先に手を伸ばし、優しく撫でて落ち着かせようとする。
 まるで馬の嘶きを合図にしたかのように、シェシルの体が動いた。身を隠していた森の陰から、その先へと飛び出したのだ。必死に馬の首にしがみつくラルフの視界の端に、シェシルのマントがふわりと広がったのが見えた。
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