ジェフティ 約束
 ラルフは納得しながらシェシルが足を止めたほうを見つめた。そこは、昨日の夜インサと旨い飯を食べたマスターブリッシュの店『アフィシオン(愛好家)』だ。
 アフィシオンはもうすでに開店しているようだ。朝早くに旅立ちたい旅商人たちが、朝飯を食べるためだ。シェシルは入り口のドアをゆっくり押して、中へと入っていく。馬の手綱を握り締め、ラルフは入り口から中をうかがった。
 シェシルが店内に踏み込んだとたん、店の中の喧騒がやむ。朝飯を食べながら談笑していた客たちが、一斉に口をつぐみシェシルを見つめ眉をひそめたのだ。
「マスター、エルゴー酒と何か旨いものを頼む。この坊主にもな」
 シェシルは奥のカウンターでフライパンを振っているマスターに声をかけた。どうやらシェシルはマスターブリッシュを知っているようだ。
 店の入り口で馬の手綱を握って立っているラルフをマスターは一瞥し、シェシルにこう言った。
「傭兵はお断りだよ。そんなに血の匂いをぷんぷんさせられてちゃ、商売上がったりだからね」
< 203 / 529 >

この作品をシェア

pagetop