ジェフティ 約束
 助けてもなお、消え去りはしなかった憎しみを抱えるシェシルへの贖罪(しょくざい)の想い。そして、自分の前から姿を消した少女を引き止めることも、抱き寄せることもできなかった悔しさ。
 ノリスの別れ際の言葉が、今になって大きく胸に突き刺さる。
 ――強くなれ!ジェイを奪い返しにいってこい!
 本当は自分がそうしたかったはずだ。消えたシェシルを……。
 そうかと納得する一方、この痛々しいまでの現実を前に、ラルフは戸惑いを隠すことはできなかった。
「シェシル、だけどノリスは……」
 ラルフの語尾が震える。
 彷徨いの森の中で、この剣を、ノリスとの思い出そのもののような剣を握って、悲しい孤独な鎮魂の舞を踊っていたシェシルが思い出された。あの時、自分は確かに胸が締め付けられるような悲しみをシェシルから感じていたのだ。
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