ジェフティ 約束
 ラルフは偶然自分がシェシルに対して抱いていた思いを、形にしてあらわしている文字に見入った。
 まさに、その言葉通り、どんなものにも流されない意志で、シェシルは歩み続けているのだ。
 シェシルが剣の刃を動かす度に、反射した日の光が目に染みる。
 シェシルをルシオンテ村から連れ帰り命を助けたのは、間違いなくノリスだ。――静謐なる鼓動――に万人の平和、故郷の安らぎを誓い守ろうとして、人を傷つけその矛盾に苦しんでいたノリスの心中を思う。
 ノリスはテルテオに帰ってきてから一度も剣を握らなかった。刃をつぶした飾りの剣で踊る鎮魂の舞ですら、村人からどんなに頼まれても踊ることはなかった。

 ――もう私は、剣を握る資格はない。
 ノベリア軍の襲撃にあったあの時、ノリスが言っていた、自分を恥じているような言葉を思い出した。でも今、この剣を見ていてノリスが恥じているものの先にシェシルの存在があったことに、ラルフは気が付いたのだ。
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