ジェフティ 約束
女たちは、扉を押し開けて登場したアスベリアの姿を瞬き一つせず凝視している。カエル男、もとい、ナーテ公にぶどうの実を口移しで食べさせようとしていた女の口から、ポロリとその実が落ちた。
アスベリアはゆっくりと騎士の礼をナーテ公に向け、紺色のマントを優雅に払い絨毯の上に片ひざをついて頭を垂れた。
「アカヤ領主、国王軍参謀少将、アスベリア=ベルンでございます」
無用な挨拶は一切しない。
この部屋に来るまでにアスベリアは、なぜナーテ公がわざわざオルバーから来たのかを考えていた。考えるだに腹が立ってきて、とにかく長々と挨拶などしておられるものかと、ここまでで言葉を区切ったのだ。
「貴公、巫女姫はどうされたのだ」
ぜいぜいと荒い息を吐きながら、ナーテ公はなんとかその身を起こした。
「予はわざわざオルバーからここまで早馬車で参ったのである。その理由が分からぬはずはあるまい」
この肉塊。顔の下の首が、胴と一体化したように肉のひだに覆われた、なんとも人間とは思えない塊。肉に締め付けられた喉から、まるで搾り出すかのような声がもれ聞こえてきた。
アスベリアはゆっくりと騎士の礼をナーテ公に向け、紺色のマントを優雅に払い絨毯の上に片ひざをついて頭を垂れた。
「アカヤ領主、国王軍参謀少将、アスベリア=ベルンでございます」
無用な挨拶は一切しない。
この部屋に来るまでにアスベリアは、なぜナーテ公がわざわざオルバーから来たのかを考えていた。考えるだに腹が立ってきて、とにかく長々と挨拶などしておられるものかと、ここまでで言葉を区切ったのだ。
「貴公、巫女姫はどうされたのだ」
ぜいぜいと荒い息を吐きながら、ナーテ公はなんとかその身を起こした。
「予はわざわざオルバーからここまで早馬車で参ったのである。その理由が分からぬはずはあるまい」
この肉塊。顔の下の首が、胴と一体化したように肉のひだに覆われた、なんとも人間とは思えない塊。肉に締め付けられた喉から、まるで搾り出すかのような声がもれ聞こえてきた。