ジェフティ 約束
「っつ、いってぇ……」
 ラルフはうめき声を上げた。
 ラルフがシェシルの顔を後ろから覗き込んだ時だった。シェシルの手が、厚布を折りたたんで作られた枕の下から出た瞬間、ラルフの喉元に冷たく光るものがぴたりとあてられたのだ。ラルフはそのひやりと冷たいものを避けようととっさに身を引き、そのまま後ろへと倒れこんで、窓の縁に後頭部を打ち付けたのだ。

 シェシルはナイフを構えた姿勢のままで、床に倒れこんだラルフの方へと視線を向けた。ナイフの刃に反射した光りが、シェシルの瞳を浮きあがらせる。その瞳はアメジストの強い光りを放ち、険しさに満ちていた。
「なにすんだよ!」
 ラルフは喚く。あまりの痛さに目に涙が浮かんでいた。
「お前が後ろから声をかけたりするからいけないんだ」
 シェシルの声が寝起きでかすれていた。ナイフを鞘に戻し、寝台の上で体を起こして髪をかきあげる。
「なんだよ、俺のせいなのかよ。シェシル、今、寝ぼけたんだろう!?」
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