ジェフティ 約束
「夜か?」
「人の話をきけよ!夜になったから起こしてやったんだろう?」
  シェシルは喚くラルフを無視して寝台から離れると、窓に近づき静かにそっと雨戸を少しだけ押し開け外の様子をうかがった。
 その姿勢のまま、シェシルは目線だけをラルフに向けると、先ほどの険しい光りを湛えた瞳のままで口を開いた。
「……ラルフ、お前、さっき何か夢を見なかったか?」
 ラルフはその言葉にはじかれたように顔を上げる。シェシルにはラルフのその表情だけで十分だったようだ。
「見たんだな……」
 そうつぶやくと、シェシルは雨戸をそっと閉じて、まとめられていた荷物のほうへと歩いていった。
「私も見たんだ。お前がジェフティを追いかけていく夢だった」
「……ジェフティは、赤い星が落ちてくるって。それを拾いに行くって言っていた。…シェシル、赤い星って何?」
 シェシルはまとめられた荷物の中から何かを取り出している。そして、ラルフの言葉に首を横に振った。
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