ジェフティ 約束
 シェシルは、男たちが野営に焚かれた赤々と燃え上がる炎のそばへと落ち着き、食料を口に運んで談笑が聞こえてくるまで、じっと草むらに身を潜めていた。ようやくラルフとインサの隠れている岩場へと戻ってきたときには、すでに男たちが焚き火を取り囲んでから一時間以上の時がすぎていた。

「やはり、山賊なんかじゃなかったな」
 シェシルは暗闇の中を器用な足取りで音も立てずに歩いてくると、岩場の隙間にするりと身を滑り込ませた。
「うん、俺もそう思う。あいつらノベリア軍なのかな」
「いや、違うな。だが油断はできない。のこのこあいつらの前に出て行くのは避けたほうがよさそうだ」
 それ以上何も言わないシェシルの瞳が、焚き木の炎の輝きを吸い取ってしまったかのように暗闇でゆらゆらと紫色に揺らめいている。ラルフはフードを目深に被りなおして、岩に背中をあずけた。
「ラルフ、長剣は背中に背負ったままにしておけ。私がやった剣をいつでも使える位置に置いて眠れよ」
 ラルフはシェシルの言わんとしたことを感じとり、肩に担いだままの長剣の革のベルトの締まり具合を確かめ、腰に下げていた短剣の止め具を外し鞘ごと胸に押し当て抱きしめた。
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