ジェフティ 約束
 村はずれには、コドリス軍の天幕が張られていた。その脇には、見慣れた建物がある。アスベリアがこの村を出るまで生活していた小さな家が、何も変わらぬ姿でぽつりと建っていた。角が丸く欠け落ち大小さまざまな寄せ集めのレンガを組み合わせて作られたその家の壁は、一つ一つに見覚えがあり、軒下の煤けた形さえもその頃と変わらぬ姿をしていた。時間がそこだけ止まっているかのように、アスベリアを待っていたかのように。
 感傷に、思い出に浸りそうになる。今でも家族が待っていてくれるかのような幻影が、アスベリアの胸に迫った。家族の笑顔が、笑い声が胸に去来する。

 ――今さら、何を……。

 謝ることも、許されることももう出来ない。アスベリアは自分の心がどこか虚ろなものを抱えたことを知った。
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