ジェフティ 約束
「さっさと入れ!」
 背中を突き飛ばされるようにして押し込まれた天幕の中は、魚の油を燃やした胸の焼けるような臭いがたち込めていた。兵士たちは、むき出しの地面に三人を押し付けるようにして膝を突かせると、奥に座っていた人物に報告をしている。
「捕らえてまいりました!いかがいたしましょう?」
「女とシラーグはどこかに閉じ込めておけ。わしはアスベリア=ベルンに話しがある」
 奥に座っている人物は、少しかすれた低い声でやけに愉快そうな笑い声を立てた。シラーグとルーヤは、もはや抵抗する気もないらしくおとなしく兵士たちに両脇を抱えられて、一言も発することなく天幕から連れ出されていった。
 少しの間の沈黙。
 奥に座っていた男が、じっとアスベリアを見つめている。アスベリアは毅然とその顔を見返した。
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