ジェフティ 約束
「……何を見た、アスベリア。君が隠しても、いずれはどこからか噂は噴出する。その時に、君が関わっていたと知れれば、君自身にもことが及ぶんだぞ」
 アスベリアはベラスの穏やかな言葉を聞きながら、とっさの言い訳を口にしていた。
「逃げている途中、コドリス軍が野営をしているところに出くわしてしまったんです。ペルガの村人を人質にされ、抵抗することが出来ませんでした。私たちは捕虜になり、シラーグ准将は命を落とされました。私は隙を見て逃げ出し、コドリス軍の大将だったボルシェ=サズル将軍を殺して……、剣を奪って逃げてきました」
 ベラスは険しい表情でアスベリアの話しに耳を傾けている。アスベリアが薄いベールで包み込んだ嘘も、ベラスは見抜いたことだろう。ペルガがアスベリアの故郷だったということも、ベラスは思い出していたはずだ。しかし、ベラスはそこには触れずぐっと押さえた声で訊ねた。
「密告者はアイザナック=ラフィ少将……だな」
 アスベリアはベラスの瞳を見つめてただ頷いた。
「そうか……。奴は、他愛もない喧嘩に巻き込まれて、路地裏で死んだ。誰かからラフィのことを告げられても、驚いたフリをして哀悼の意を述べるように」
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