ジェフティ 約束
「インサ、お前の分はないからな。私たちから離れていろよ」
「ひでえ……」
 ラルフはシェシルから受け取った黒いマントを手早く肩に掛けると、フードを引っ張り上げて頭をすっぽり覆った。シェシルのマントは丈が長く、ラルフの踝まで覆い隠してしまう。不恰好だが仕方がない。
 湖を周回するように、三人は他の旅人に混じって歩いてゆく。ラルフは湖面に浮いているように建つ荘厳な佇まいの城を見つめながら、どこからこの城へと入るのかと不思議に思っていた。
「ラルフ、見ろよ!」
 不意にインサが右前方を指差した。
「うわぁ」
 ラルフはインサが指差した先にそびえるものの大きさに思わず立ち止まった。
「オルバーの守護神の像だぜ」
 湖の湖面から、それは突如姿をあらわしたかのようだった。ラルフたちの位置からはまだ光を放っているような白い後姿しか見えない。しかし、その大きさは、城の尖塔の天辺にもとどかんとするほどのものだった。
 やや頭(こうべ)を垂れるような姿勢で、両手を湖面につけているそれは、手前に二体、その向こう側に向かい合って二体建っている。その像の間を、湖岸から城の入り口へと橋が渡され、四体の像はそこを行き交う人を見下ろしているようだ。
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