ジェフティ 約束
 ラルフは始めてみるその光景に息を呑む。人の手で生み出されたものとは思えないものの前で、ラルフは圧倒的な威圧感を感じていた。
「霧が来るぞ」
 シェシルが城の後方にそびえる山脈を仰ぎ見た。
「なんだ、あれは!」
 ラルフはシェシルの視線の先にあるものに驚き、思わず身構えた。そびえる山脈の山肌を滑るように、白い塊がこっちへと猛スピードで向かってくるのを息を詰めて見つめた。
「雪崩!?」
「濃霧の波ってんだよ。巨人の伊吹ともいう、オルバーが霧の都と呼ばれる現象のひとつだぜ」
「あれが霧?」
 そこに生えている木を飲み込むように、山肌を這いずり霧が塊となってうねっている。先頭は渦を巻き、木々を揺らしながら湖の湖面にあっという間に流れ込んできた。それは城の城壁に当っても止まる気配を見せず、城全体をその体内に飲み込むように包むと、ラルフたちがいる対岸へと迫ってきた。
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