ジェフティ 約束
 ラルフはその頭上に荘厳とそびえる城門を見上げた。天をついて聳(そび)える物見の塔が深い霧にその姿を包まれ、巨石で築かれた堅牢な城壁が長い時を見つめてきたものだけが持ちえる重厚さで、そこに存在した。ラルフはシェシルたちとはぐれたことからくる焦燥感とはまた違った、四方から押し潰されるような恐怖のようなものを感じとっていた。
 名工たちの手によって見事な彫刻をほどされた壮麗な門に、しばし目を奪われたが、ラルフは人の波に押されるようにそれを通り過ぎ、ついにノベリアの第二都市オルバーへと足を踏み入れた。

 街の中はひやりとした霧が漂う灰色の風景だった。皆一様に黒いフードを頭から目深にかぶり、話し声も密やかにしか聞こえない。城門脇に並ぶ店も、全て入り口に黒い布が下がり店内の明かりはほとんどついていなかった。
 ラルフは家々の軒下に下がる店の看板を一つ一つ見ながら、商店街を奥へと進んでいく。
 大人が二人やっと肩を並べて歩けるほどしか幅のない道は緩やかに歪曲し、磨り減った石畳が斜めに下ったり登ったりしている。街は想像以上に入り組み、石作りの建物はまるで箱を乱雑に積み上げたように規則性が無い。
「……鍛冶屋、……シェルグ」
 ラルフは思わず呟いたが、それらしい店の看板を見つけることもなく、人通りの淋しいひっそりと静まり返った袋小路に出てしまった。
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