ジェフティ 約束
「この通りじゃないのかな」
 踵を返して再び来た道を戻ろうとした時、袋小路の端の店内から物音が聞こえた。看板は出ていなかったが、入り口に酒樽が積みあがっているのを見ると、そこは酒場か宿屋のようだ。入り口にかけられた黒い布の隙間から、ランプの明かりがちらりと揺れているのが見える。ラルフは意を決してその店の入り口へと続く階段を下り、ドアを叩いてみた。
 何度か叩いていると、中で重く響く足音と椅子を引きずる音が聞こえ、中で揺れていたオレンジ色の灯りがラルフの立つドアに近づいてきた。
「なんだ、しばらくは閉店だよ」
 ドアを開けながら不機嫌そうな表情の男がのっそりと出てきた。ラルフと同じような背丈のずんぐりした男は、グレーの口ひげを顎の下で三つ編みにしていた。ラルフの姿を見て周囲を見回すと、男は舌打ちしてドアを閉めようとする。ラルフは慌ててドアの端を掴んだ。
「人を探してるんです!」
 ラルフの声が反響するように袋小路に響いた。
「お前の親なんて、オレは知らん。ここはお前のようなガキの来るところじゃねえ。帰んな、坊主」
「違うんです。鍛冶屋の……、シェルグさんというおじいさんを探してて、そこで、あの……」
 男の表情が怪訝に曇った。ラルフは言いよどむ。シェシルと待ち合わせしていることを言ってもいいものなのか判断できなかったのだ。
「シェルグのじいさんだぁ?」
 男のその言いように、ラルフは何か知っていると感じ取った。
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