ジェフティ 約束
シェシルはふいっと何気なさを装いながら列から離れ、槍を構えたままインサの襟を掴んでいる兵士の方へと歩いていった。再び人々の列は動き始める。ラルフは二人が気になったが、そちらの方には目を向けないよう意識して足元を見つめ、黒いマントを着た人々に押し流されるように歩みを進めた。
白くひんやりとした空気を頬に受けながら、ラルフは一歩一歩進むたびに孤独に締め付けられてゆく胸を、ぐっと歯を食いしばって耐えた。
「それにしてもな……」
不意に前を歩く旅人が口を開いた。大きな黒塗りの馬車の後を歩きながら着いて行く付き人らしかった。その付き人二人が懐の水の入った袋の口を緩めながら話をしている。
「エイリア=ナーテ様が急にお亡くなりになられたなんて、一体何があったんだ?」
「さてなあ、我らには到底はかりしれんが……。父君のクレテ公は、ご心痛のあまり床に臥せっておられるとか」
「ザムラス陛下も王都から葬儀に参列されるために都を発たれたそうだ。大事になったもんだよ」
付き人たちはひそひそと噂話をしながらも、城門の手前まで辿り着くと今日の宿屋の夕飯の話題を持ち出し、エイリア=ナーテの死に関する情報はそこで途絶えてしまった。
ラルフにとっては、その橋の長さが数時間にも思えた距離だったが、実際は数分であったろう。この国の要人が一人死んで、国中が喪に居ていることだけは確かで、門番をしている多くの兵士たちもまた、一様に暗く重苦しい雰囲気を漂わせ、厳しく強張った表情で城門をくぐり行く旅人たちの列を見送っていた。
白くひんやりとした空気を頬に受けながら、ラルフは一歩一歩進むたびに孤独に締め付けられてゆく胸を、ぐっと歯を食いしばって耐えた。
「それにしてもな……」
不意に前を歩く旅人が口を開いた。大きな黒塗りの馬車の後を歩きながら着いて行く付き人らしかった。その付き人二人が懐の水の入った袋の口を緩めながら話をしている。
「エイリア=ナーテ様が急にお亡くなりになられたなんて、一体何があったんだ?」
「さてなあ、我らには到底はかりしれんが……。父君のクレテ公は、ご心痛のあまり床に臥せっておられるとか」
「ザムラス陛下も王都から葬儀に参列されるために都を発たれたそうだ。大事になったもんだよ」
付き人たちはひそひそと噂話をしながらも、城門の手前まで辿り着くと今日の宿屋の夕飯の話題を持ち出し、エイリア=ナーテの死に関する情報はそこで途絶えてしまった。
ラルフにとっては、その橋の長さが数時間にも思えた距離だったが、実際は数分であったろう。この国の要人が一人死んで、国中が喪に居ていることだけは確かで、門番をしている多くの兵士たちもまた、一様に暗く重苦しい雰囲気を漂わせ、厳しく強張った表情で城門をくぐり行く旅人たちの列を見送っていた。