ジェフティ 約束
「余分なこと訊いてるんじゃねえ。物はなんだ」
 喉に何かが引っかかっているような耳障りな声だった。
「もの?」
「てめえが背負ってるものはただの飾りか、って訊いてんだ!」
「ああ、あの……!」
 ラルフは慌てて胸の止め具を外し長剣を前に回して、物見窓の前に柄の部分を見せた。
 ややあって、金属が擦れ合う音が聞こえドアの向こうで閂が動いた。物見窓が開いた時と同じように唐突に閉まったかと思うと、ドアが音もなくラルフの方へと開け放たれた。
 シェルグ老らしき人物は、ラルフよりも頭一つ分は背が高く、頑強な腕に革当てを付け、胸の前にも分厚い革の胸当てを下げていた。髪はなく、白い眉は片方が短い。恐ろしいほど顎が張り、物見窓からも窺えた鋭く光る双眸は、日の光の元に出ると青く澄み渡った秋の空のようだった。ラルフは老人の頑固で厳しそうな表情の前に怖気付き、何かを言わなくてはならないはずなのに言葉が喉の奥に張り付いたかのように出てこない。そんなラルフに老人は、目顔で中に入るように促すと、さっさと灯り一つない暗闇に一人消えていった。
「閂、かけておけ」
 暗闇から老人のかすれた声だけが聞こえた。
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