ジェフティ 約束
 ――シェシルは、どうしてあの時……、山賊が軍を襲ったあの時、止めたりしたんだろう。もしかしたら混乱に乗じてジェイを見つけ出して一緒に逃げられたかもしれないのに。
 しかし、そう思えば思うほど、ラルフはその可能性は無に等しかったのではないかと、自信を固めつつある。
 ――まだ、オレには何か足らない。強さか……。シェシルが認めるほどの強ささえあれば、ジェイを助けに行けたのか。
 ラルフは一瞬、このままずっとジェイに会えないのではないかという恐れを感じた。自分が突き動かされている想いが揺らぐ。自分が抱く信念が崩壊しそうになる。しかし、己の身の内の何か空白の部分がそう感じさせるのだと、まだ気がつけないでいた。それは幼さからくるがゆえか、未断ゆえかは、誰に問いただそうとも答えられるはずもなかったのだった。

 シェシルは、ラルフの寝顔を眺めその深い呼吸をじっと聞きながら、シェルグの煎れてくれたお茶を口に運んでいた。時折、暖炉の中の薪がぱちぱちと爆ぜると、シェシルの双眸が星のきらめきのように輝くのだった。
「今日はやけに冷えるな。もうすぐ夏だというが、今年はこのままだと不作になるかもしれん」
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