貴方に愛を捧げましょう
以前いた学校でも、友人と呼べるような人はいなかった。
あたしは一人でいるのが好きだから、今いるこの学校でも──学校でなくたって、どこにいても一人がいい。
そんなあたしを、彼が邪魔をする。
だけど……それをどうにかしようと思うのは、諦めた。
学校が終わって家路に着くと、真っ直ぐ自分の部屋に向かった。
まだ開けていなかった引っ越しの名残の段ボールを開き、中を覗き込む。
たしか、この段ボールに入ってたはずなんだけど……。
「何かお探しで…?」
「ピアッサー」
尋ねてきた彼を見もせずに答えたけど、はたして“ピアッサー”という言葉が解るのかどうか。
まぁ、別にどっちでもいいけど。
「──…あった」
引っ越しするより以前に買い置きしてあったそれを手にして、立ち上がる。
プラスチックの箱から中身を取り出し、パッケージはゴミ箱に投げ捨てた。
説明書はいらない。
やり方は知ってるし、今回は自分でこれを使う気はないから。
振り返って後ろにいる彼と対面し、近付く。
蜂蜜色の瞳がじっとこちらを見つめる。
あたしの頼みを聞いて、彼の綺麗すぎる顔にどんな表情が浮かぶか……見ものだわ。
「これ、持って」
「──…はい」
不思議そうな表情を浮かべる彼にピアッサーを渡すと、彼はそれを訝しげに眺めた。
そこであたしは、自分の耳を指差す。
左耳は四つ、右耳には三つ、ピアスホールが空いている。
バランスを考えて、もちろん右耳を示した。
「そこに針が付いてるでしょ?」
「ええ……」
もう片方の手で彼が持つピアッサーを指差し、針を指し示す。
ゆっくりと頷いた彼を真っ直ぐ見上げて、言い放った。
「それで、ここに穴をあけて」
彼の顔が、微かに歪んだように見えた。