好きだ好きだ、大好きだ。

肩にかけていたエナメルのカバンを下におろした彼は、ポケットからお財布を取り出すと、そこからお札を1枚取り出して、私の震える手の上に乗せる。

「丁度お預かりましす。こちら12回のカードが5枚です」
「どうも」
「……」

もうちょっと、何か話しが出来るんじゃないかって思っていた。

だから、カードを買って足元のカバンを拾い上げた彼が、私にペコリと会釈をして何も言わずに去って行った瞬間、ちょっとだけガッカリしたんだ。

「むー……。やっぱり気付いてなかったのかな?」

たったこれだけの事なのに、胸にポッカリと穴が開いた気分。

そんな私の目の前で、彼は相変わらずの快音を響かせながら、ボールを遠ーーくまでかっ飛ばしている。

そうだよねー。別に、友達でも何でもないし。
もしもあの時気付いていたとしたって、話しかける必要はないもんね。

まるで自分に言い聞かせるような言葉を心の中で呟きながら、私はまたノートに視線を戻したんだ。


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