好きだ好きだ、大好きだ。

きっとまた、楽しい時間がやってくると思っていた。

――それなのに。

「だからさぁー。ちゃっと見ろって、ボール」
「見てるー!!」
「じゃー何でボールとバットの高さが、30センチもずれてんだよ」
「知らないよー!! ボールが避けてるんじゃないかな!?」
「んなわけあるか」

“じゃー後ろで見てっから、行って来い”――ベンチに腰掛けた彼にそう言われた私は、その後ろからの視線にドキドキしながら打席に立っていた。

……始めのうちは。

だけど気付いた時には、そんな緊張感はどっかに吹っ飛んでいた。

だって、前からちょっとだけ気付いていたけど……

「何でそんなにスパルタなのっ!?」

そうなんだ。
このおにいさん、顔に似合わずスパルタコーチなんだもん。

結局今日も球にかすりもしなかったバットを、少し乱暴に元の場所に戻した私は、膨れながら大笑いする彼を睨み付ける。

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