好きだ好きだ、大好きだ。

「……イヤじゃない」

イヤなわけがないよ。

「どうした?」
「なんでもない」

俯いて黙り込んだ私。

「やっぱり暑さでやられたんじゃねぇの?」

その頭の上に、クスッと笑った夏希君がポンッと置いたのは

「しょうがないから、貸してやろう」

試合の間、夏希君が私に貸してくれていた野球帽。


「ごめん」
「へっ? なんで?」
「あと、ありがとう」
「……いいえ。特別だぞー」

“特別”。
夏希君のその言葉に、胸がコトンと音を立てて、ゆっくりと顔を上げると、そこにはいつも通りの笑顔を浮かべた夏希君が立っていて。

「行こう」
「……うん!」

だから私も、にっこり笑って返事をして、歩き出したんだ。

< 95 / 232 >

この作品をシェア

pagetop