月を狩る者狩られる者
私はゆっくりと目を閉じ――。

唇が触れる。


覚悟は、優しい緩やかな雰囲気によって自然と決まった。


朔夜の節ばった男の手が、私の身体のいろんなところに触れる。

その動作一つ一つがとても優しくて、私は泣きたくなった。



この世の誰よりも、朔夜に愛されていると錯覚してしまいそうだから。


そんなわけ無いのに……。



でも、今の私はその錯覚を信じたかった。

それに、少しは愛されていると思う。

だって、少しも想っていない人間に、こんなにも甘く優しく触れたりしないでしょ?



だからいいの。


朔夜の愛が感じられるなら、私は朔夜に全てをあげる。


心も。

身体も。

血も。


命さえも――。



「朔夜……さくやぁ……すき……好きだよぉ……」

私は朔夜に全てを任せ、うわ言の様に呟いていた。
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