月を狩る者狩られる者
私は慎重に足を進めた。
自分を囮(おとり)にでもしないと出てこなそうだったから。
相手から見えやすい場所、開けた場所の中央に向かう。
中央辺りで足を止めた瞬間、左側から何かが飛び出してきた。
当然、追っていた吸血鬼だろう。
奴は振り向いた私の腹を蹴り上げた。
瞬時に腹を両掌で庇ったけど、吸血鬼の力はすさまじくて私はそのまま背後の木に背中を叩きつけられる。
「うっ……」
小さくうめき声を上げると、今度は両腕を掴まれて木に押し付けられる。
そして、掴まれた腕が頭の上でひとまとめにされた。