トマトときゅうり


 きゅうり!?

 ええっ!?何で何で??

 パニックになって、言葉が出ない。

 目を凝らしてそろそろと近づくと、私の部屋の前でドアに背を預けて立っているのは、紛れもなくきゅうりだった。

「・・・楠本さん!?」

「驚かせたな、悪い」

 駆け寄って、近づく。

「ななななな何してるんですか?ここで」

「ちょっと、頼みがあって。仲間に聞いたら帰ったって言うから、もともと近くにいたし来てみたけど、いなかったから待ってた」

 待ってたって・・・この雪の中?外で待とうと思うには厳しい気温だと思いますけど・・・。

「すみません、買い物してて・・・」

 よく考えたら別に謝る必要はないんだけど、いつもの立場が立場なだけに、つい謝ってしまった。

「いや、俺が先に電話すればよかったんだ」

 そうだよ、その通りだよ、とは勿論言えない。今さらすみませんを撤回するわけにもいかない。全くもう。

「えーっと・・・頼みってなんですか?」

 きゅうりは手で口元を覆って、言いにくそうな顔をした。

 うん?・・・何でしょうか、この顔は。


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