あやまち
カランカランとグラスの中の氷が音をたてながら、麻希はこの部屋へ入ってきた。


ローテーブルにコースターを敷いてグラスを置く。


そのまま、麻希はソファーに腰かけるあたしの隣に座った。


グラスに口をつけ、クイッと一気に半分くらい飲んだあと、麻希が話し始めた。



「渉と、別れたよ」


「えっ!?」



麻希から、渉の話を聞かされるだろうとは思っていたけれど、最初からその話をしてくるとは思わなくて、必要以上に驚いてしまった。


でもそんなあたしをよそに、麻希はさらに言葉を紡ぐ。



「といっても、付き合ってたこの三ヶ月の間に、恋人らしいことはなにもなかったけどね」



苦笑しながらそう言った麻希は、今にも泣きそうな顔をしていて……



「きっと、バチが当たったんだ」



と言ったとたん、目尻から一粒の涙がこぼれた。

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