あやまち
「何?」


「夕飯、どっか食いに行かね?」


「えっ」



翔太と別れて二週間、こんなふうに外へ出ることを誘われたことがなかった。



「無理に誘ってる訳じゃねぇからな」



あたしが何も答えずにいると、翔太は慌てたようにそう言ってから



「友達として、夕飯を食べに行きてぇって思っただけ」



さらにそう付け加えたけれど……


どうしよう。


別れてからも家の中では二人で食べているし……


それに翔太は『友達として』と言っているんだから、余計なことを考える必要はないよね。



「……行く」


「マ、ジ?」



ドア越しでも、翔太の吃驚している様子が伝わってくる。


自分から誘っておいてその反応はどうかとも思うけれど、こういう翔太もなんだか新鮮でいい。

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