あやまち
足は自然とその方向へ向いていて……


ゆっくりだけれど、その存在を強調するようなトクントクン……という音が、あたしの中で鳴り始めた。


テニスコートから響いてくる音を出している人は、たぶん……


ううん、絶対に、渉だと確信している。


以前から、こうやって朝早くに来てテニスをしていることがあったから。


そんなときは、あたしもよく一緒に来ていた。


一歩一歩進む度に、パコーンという音と同調するように、あたしの中のトクントクンという音も大きくなっていく。


昨日麻希が言っていた言葉……



『渉に会ってみたら?』


『もしかしたら、答えが出るかもよ』



正直、その答えを知るのは怖い。


でも知ってみたいとも思う。


だから、とりあえず遠くから眺めるだけでもいいから、その姿を視界に入れたいと思った。


そしたら、自然と足がテニスコートへ向いてしまったんだ。
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