あやまち
何で渉がいるの?


翔太もあたしも、渉にはこのアパートの場所を教えてはいなかった。


だから、ここに渉がいる意味がわからない。


どうしようかと考えている間にも



「悠亜、開けろって」



近所迷惑を考えずに、軽くドアを叩きながら大きな声を出してくる。


夜の10時を過ぎているのに、この声は、近所の人にとっては迷惑以外の何物でもない。


だから、このまま放っておくという選択肢は、消去せざるを得ない。


チェーンをかけたまま鍵を開けることも考えたけれど、ちゃんと開けるまでは、渉はこの場所を動かないような気がして、小さく息を吐いてから、ガチャリと鍵を開けた。


その瞬間――


ドアが一気に開いた。


それと同時に、玄関に体を滑り込ませてきて……



「久しぶり」



そう言った渉は、以前と変わらないような爽やかな笑みを浮かべていた。

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