あやまち
だから……


来客用のスリッパを渉の前に置いて、



「どうぞ」



そう言って、渉に背中を向けて中へと足を進めた。


そんなあたしを見て、渉は「お邪魔します」と言ってから、あたしのあとをついてきた。



渉をソファーに座らせて、あたしはキッチンでお茶を煎れる。


ふーっと息を吐いてから、どきどきしながら、お茶をもってリビングに入った。


ソファーの前にあるローテーブルにお茶を置いて、一人分のスペースを空けて、渉の隣に腰かける。



「やっぱり警戒してるよな」



そんなあたしに渉は苦笑しながら、ポツリと呟いた。



「そんなこと、ないよ」



あたしは、さっき渉が言った言葉を信じてるもん。


でも渉は、そんなあたしの言葉には半信半疑で。



「前までは、こんな風にスペースを空けたことがなかっただろ」


「……」



渉に言われて、そういえばいつもは体が触れそうなほどの位置に座っていたかもしれないということを、思い出した。

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