あやまち
「指輪?」


「ん、悠亜と想いが通じ合ってたわけでもないのにさ。……なんか願掛けみたいに、これを持ってるとうまくいきそうな気がしてた」



あたしの気持ちに確信がないのに、こんなに高価なものを準備していた渉。


その気持ちが嬉しくて、目が涙で潤んできた。



「渉、これつけて?」



そう言って、今貰ったばかりの箱を渉に手渡すと同時に、手も差し出したけれど……



「こっちでいいのか?」



左手を出したのは無意識だった。


でもこの先、あたしにはもう渉しか考えられなくて……



「うん、ここにつけて」



渉の瞳を真っ直ぐに見ながらそう言うと、渉はやさしく微笑みながらあたしの左手をとった。


そしてゆっくりと指輪が嵌められる……






……はずだった。
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