あやまち
「はな、して……」


「やだね……やっと、おまえを抱けるんだ」


「なに……言ってっ」




渉の口から出ている言葉の意味が、わからない。



この暗がりの中でも、渉が凄くやさしい表情をしているのが、わかる。



さっき、怒って帰ってしまった時とは……、まるで別人。



そんな瞳で、見つめないで……




「おまえが……好きだ」


「えっ」


「だから……」




頬に添えられた大きな手が、ゆっくりと動き、そのまま髪をすくように、やさしく撫でる。



一旦止められた言葉。



渉は、また静かに口を開いて……




「黙って俺に抱かれろよ」


「……!」

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