あやまち
自分勝手な欲望を口にした渉は、あたしの意思を無視して、唇を強く押し付けてきた。



そのまま舌先で、唇を割って侵入してきた舌は、口の中を激しくかき回す。



手足をバタバタして抵抗するけれど、男の力を前に、そんな行動は……無意味に終わる。





いつの間にか、あたしの顔は涙で濡れていて……



渉は、それをすべて唇ですくっていく。



渉に抱かれているのに……、この甘くて爽やかなシトラスの香りが、あたしを惑わせる。



こんなの、変に決まってる。



渉は麻希の彼氏なのに……



あたしの彼氏は、翔太なのに……





気付いたら、行為そのものが終わっていた。



頭から布団をかぶって泣きじゃくるあたしをよそに、渉はすぐ傍でベッドに腰かけている。
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