あやまち
つい視線を、斜め前の運転席へと移してしまう。




「……っ……」




その姿をとらえる前に、バックミラー越しの視線に気付き、その瞳に吸い寄せられるように、身体中が固まってしまった。





今日は朝から渉とは、言葉を交わすどころか、視線も合わせてはいなかった。



翔太と麻希に気付かれやしないかと、どきどきしていたけれど、意外に素通りなもので……



でも今、こうやって様子がおかしいことに気付かれてしまった。



流されるままに着いてきたけれど、やっぱり来なきゃよかった。



適当な理由をつけて断ればよかったんだ。



もう、帰りたい。



この場所に、いたくないよ――…
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