あやまち
「もう、一緒に住んじゃえばいいじゃん」




麻希にそう言われて、翔太と同棲することを言ってなかったことに気が付いた。



いつもなら、こういうことは真っ先に麻希に話しているのに、渉とあーなってしまってからは、自分が自分じゃないようで、何を話したか、何を話していないか、よくわからなくなっていた。




「実はね、……来月から翔太と一緒に住むんだ」


「えっ!?」




麻希は、とんとんと動かしていた包丁を止め、目を見開いてこっちを見た。




「そ、なの?」


「うん。今、少しずつ準備を進めてる」


「ずいぶん、急なんだね」




あたしも最初はそう思った。


ていうか、今でもそう思っているけれど……


それでも、早くあの場所から抜け出したいから、そんなことすら考えなくなっていた。
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