その瞳で見つめて~恋心~【完】
「アンタ、泣きそうな顔してるよ?」

「え?」

屋上に到着して、いつも通りに床に座り込んで鉄柵に寄りかかった瞬間、奈月ちゃんがあたしの顔を見つめた。


「ショックだったんでしょ? ただの“クラスメート”としてって言われたのが」

「……っ、うん」

さすが、奈月ちゃんだ。


そう思ったら、目から滴(しずく)が一つこぼれた瞬間、貯蓄されていた涙があふれ出す。


あたしはたまらず、奈月ちゃんに抱きついた。


「奈月ちゃん……っ」

「大丈夫だから……」

奈月ちゃんも抱きしめ返してくれ、あたしの背中をさする。


しばらく、あたしは子どものように泣きわめくことぐらいしかできなくて、とにかく奈月ちゃんにしがみついていた。


「──明日さ。先輩と話してみなよ?」

奈月ちゃんはあたしが落ち着いてきたことを察して、静かに言う。


ちょっと怖い。
ずっと好きだった人で、彼氏の進藤先輩を裏切ることが……。
 でも、自分のホントの気持ちを隠すのも怖くて。


「うん……っ」

あたしは恐怖で震えながらも、決心して力強く肯いた。


恥ずかしがり屋で素直になれないあたしでも、彼女は優しくあたしの心を暴いてくれる。

だから、奈月ちゃんが友だちでよかった──と安心してしまったら、急に睡魔が襲ってきたんだ……。
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