その瞳で見つめて~恋心~【完】
「勝村蓮夜。アイツ、チャラくて有名なんだよね」

「そうなの?」

進藤君は彼が去った後を見据えながら、ぼそっとつぶやく。

けれども、近くにいたので聞き返してしまう。


「うん。──厄介なヤツと仲良くなっちゃったね。水嶋さん」

確かに厄介な人に好まれちゃった……。


あたしは静かに肯く。


「あ。ありがとう、進藤君」

「ん? ああ。ただうるさいから、注意しただけだよ」

進藤君はそう言って、すぐに教室から姿を消してしまった。


そっけない……。

お礼を言うときに彼の顔を見上げたんだけど、進藤君はこちらに目もくれなかった。


あたしはもう、ただの“クラスメイト”……。
 恋って、こんなにつらかったんだ。
進藤先輩を想ってるときは、楽しかったのに……。


「由奈。大丈夫?」

「えっ? ──あ、うん! 大丈夫だよ」

「違うよ。進藤のこと」

「え……?」

奈月ちゃんは真剣な顔であたしを見てくる。


──どうして、そんな表情で見るのだろう。

彼女の目には、何が映っているのだろう。


訊いてみたいのに、声が出ない。


「とりあえず、屋上に行こっか?」

奈月ちゃんは突然にあたしの手を引いて、早足で教室から連れ出されてしまった。
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