その瞳で見つめて~恋心~【完】
「──どうしよ……。何にしよう……」

待ちに待ったダブルデートの日の朝。


両手に大量の服を持ちながら鏡の前に立ち、どういう服装で行こうかと悩む。


どういう服、着てこう?
迷っちゃう~……。


「由奈? 何してんの、アンタ」

「あ、お母さん……。ねえ。お母さんだったら、初デートだったらどういうの着てく?」

母親はなぜか扉のすき間から覗くようにして、訊ねてきた。


「え? あら、デートなの?」

「うん──じゃなくて!」

お母さんは目を丸くした。

母はこうして、いつも話を逸らしてしまう。


「ああ、ごめんねー。私だったら、やっぱり可愛いのを着ていくわよ。学校では違うよさを見せたいから」

「そっか。ありがとう! じゃあ、これ着てく!」

「あら、いいわよー。楽しんできなさいよ」

「うん!」

母のアドバイス通りにガーリッシュ系にして支度をすると、胸を躍らせながら待ち合わせ場所に向かった。


テーマパークは意外と近所にあるほうなので、待ち合わせている場所は出入り口の前だ。


施設に到着したけど、まだ誰1人来ていないので、バッグから携帯を取り出して時間を確認した。

待ち合わせの時間まで、あと10分ぐらいはあった。


「あ。もしかして、水嶋由奈さん?」
< 90 / 192 >

この作品をシェア

pagetop