刹那音
「……き、い」
足音は消えたと思っていた。
もうどこかへ行ってしまったのかと。
まさか、
顔をあげた、
目の前にいるなんて。
これっぽっちも思わなかった。
しかも、今にも泣きだしそうな顔をして。
白い頬を赤く染めて。
「…律のばかぁ――!!!!!」
―――その上、なんの前触れもなく怒鳴られるなんて。
いったい誰が想像しただろう。
「ばかっ。ばか!!」
「ちょ、待ってよ!何?どうしたの?」
…わけわかんない…。