光～彼との夏物語～

あたしが不安げに圭を見つめると圭はあたしと由香莉のほうへ歩み寄り手を差し出した。
あたしも由香莉も差し出された手の意味が分からずただ圭の手を見つめる。

圭は小さく笑うと口を開いた。
「そんなに警戒しないで、俺翡翠の親戚で圭っていうんだ。よろしく。」
そう言いながら由香莉に手を握るよう促し、由香莉は渋々と握手を交わした。
由香莉は手を離すと圭に疑いの目を向ける。

「翡翠、本当にこの人親戚なの？」
由香莉にそう耳打ちされあたしは圭の方を見る。
間違ってもあたしと圭は親戚じゃない。

だけど圭がそう言うのなら合わせたほうがいいだろう。

あたしが頷くと「そっか。何しに来たの？」と由香莉が聞いた。
そんなのあたしが知るわけない。
どう答えようか…
あたしが迷っていると圭が助け舟を出した。

「俺が今日ここに来たのは翡翠に話があったからなんだよね。仕事で遅くなっちゃったんだけど…あ、これ俺の名刺。よかったら取っておいて。」
そう言って圭はどこからか名刺を取り出し由香莉に渡す。
名刺を見るとそこには一流企業の名前。
チャラい顔して仕事は一流ってか。
世の中皮肉なもんだ。