光~彼との夏物語~
「小野寺 圭…さん。」
由香莉が圭の名前を小さく呟くと圭を見てニコリと笑った。
「圭さんって有名なところで働いているんですね。」
「うん、まぁねー」
圭がへらっと笑うと由香莉はそのまま話を続ける。
「それで翡翠に何の用ですか?この孤児院は22時消灯でそれ以降の時間帯は朝6時まで部屋の外に出ることを禁止されているんです。もうお話が終わったのであれば大人の方が来る前に部屋に戻りたいのですが。」
合間入れず由香莉が淡々と言うと圭は苦笑いをした。
「そうなんだー。ごめんね、俺知らなくって。まだ話終わってないんだけど、どうしようか?大人の人きたら不味いよね、また来ようか?」
圭はそう言うとあたしを見る。
その目はあたしに「決めろ」と言っているようで。
やっと理解してくれそうな人が現れたというのに…
今圭を帰してまた会えるっていう保障なんてない。
また来るなんて信じられるわけないじゃない。
なのにあたしが決めろって?