光~彼との夏物語~
用意は案外早く終わった。
沢山服を持っているわけでもないし、私物が多くあるわけでもない。
必要なものだけをバッグに入れれば大き目のバッグ1つで十分だ。
「翡翠、用意終わった?」
由香莉がそう問いかけ、あたしは頷く。
「じゃあもう圭さんのとこ行く?って言っても私も何処にいるか知らないんだけど…。」
由香莉が少し苦笑いして、ドアを開ける。
するとドアの目の前に圭が立っていて、圭はにこりと笑った。
由香莉もあたしも驚いて思わず身体をビクつかせる。
普通ドアの目の前で待つ奴はいない。
せめてドアの横にいるとか、少し離れていると考えないんだろうか。
あたしと由香莉が身体を強張らせていると圭は不思議そうに首を傾げた。
「どうしたの?あ、用意終わったみたいだね、じゃ行こっか。」
由香莉と顔を見合わせあたしはため息をつく。
女の部屋にノックもせず入ってくるし、ドアの目の前で待っているし、さっきから迷惑な男だ。
由香莉も苦笑いとも驚いた顔ともいえない変な顔をしている。