うそつき
手伝ってもらって、やっとこさ立って、制服のスカートについた土をはらってると、また向こうから話しかけてきた。

「ごめんな、びっくりしたもんやからつい大声出してしまってん。怪我とかない?」

やっぱり、この人全く怒ってる感じせえへん。でも、うちはまだビビったままやったから、声が震えそうになるのを頑張って抑えて

「こちらこそすいません。では…」

案外小心者なうちは早くこの場から逃げ去りたくて、その人に背中を向けて帰ろうとしたら、今度は腕をつかまれた。

もしかして、今までの優しいのは演技で、やっぱりこの人カンカンに怒ってるんや!もう後戻りできひん!
怖くて硬直してたうちに、その人はまた優しく言葉を投げてきた。

「ちょっと待ってや。せっかくバレてしまったんやし、ちょっとだけ聞いてくれへんかなぁ?今、ちょうどチューニング終わったところやねん」
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