大切なもの
私たちは手を繋いで、駅近くのデパートにいた。
「ちょっと、買い物付き合ってくんね?」
「うん、いいよ?」
樹に連れてこられたのは、スポーツ専門店だった。
「シューズがボロボロでさ。新しいの買おうと思って」
「そうなんだ。樹、毎日頑張ってるもんね!」
「サンキュ。疲れたり、つまらなかったりしたら、そこ座れよ?」
樹が指差したのは、小さなソファ。
「ありがとう」
フッ、と笑うと樹は手を優しく解き、シューズを見始めた。
私はというと、シューズを見たり、その周辺に売ってあるボールやタオルなどを見ていた。
「あ…」
この黒のリストバンド、樹に似合いそう…。
いつも、私は樹に助けてもらってばかりだ。
お礼に、プレゼントしよう。
「樹、ちょっとその辺みてくるね!」
「分った。ナンパされるなよ?」
「プハッ!されないよっ」
樹の目を盗み、リストバンドをとるとすぐにレジへ向かった。