大切なもの
樹は私をそっと離した。

「これ、大事に使うな」
「うんっ」

樹はリストバンドをはめた。
「似合う?」
「うん、すっごく!」
「サンキュ。…なぁ、沙和」
「ん?」
「俺は、沙和を助けてるつもりなんて、ねぇよ」
「え?」
「俺がしたいように、してるだけ」
「樹…」
「俺は、沙和が笑顔でいれるなら、それでいいんだ」
「ありがとう、樹」
「じゃぁ、また明日な」
「うん。バイバイ」

私は樹が見えなくなるまで、見つめ続けた。
胸の奥が、とても温かくなった。


新しい隣は、


とても心地良い場所だった。

私の事を、大事にしてくれる彼を。


大事にしたいと、


この隣にいたいと、


思った。





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