大切なもの
樹は最初から、気づいてくれてたよね。
『沙和が下手に笑うからだ』
「沙和、なにがあった?」
「樹、疲れてるのに…。泣いたら、迷惑になる…」
「バカ。お前はいっつも人のことばっかで、自分の事は後回し。
そんなとこも、好きだけど。俺の前でくらい…強がんな」
「樹…っ」
「公園でも寄って、話そ。俺、ちょっと忘れもんしたから、さきに外出てろ?」
そう言って、ポンポンと頭を撫でると、走って樹は控室へ戻っていった。
私は外へと向かうため、歩き出した。