【完】 After Love~恋のおとしまえ~
待ち合わせ時間に空を見上げ、ため息をついた。
最後の待ち合わせくらい、遅刻せずに来てほしかったなぁ……
「ごめん、遅くなった! 手術が長引いて」
現れたサトシは、息を切らせて私に駆け寄ってきてくれた。
遅刻の理由が本当か嘘か、それはもはや私にとってはどうでも良いことで――
それよりも、サトシが走って来てくれたことが、何だか少し嬉しかった。
「リリーシュに行こうか」
サトシの提案であの店に向かう。
私は、少し前を歩くサトシの背中を見つめながら歩いていた。
サトシの背中を見るのもこれが最後かと思ったら、ふいに寂しい気持ちになってきて……
思わず、サトシの服の端をつまんでいた。
「ん?」
「手、つないでいい?」
「あぁ」
少し笑って私の手をつないでくれたサトシの手は、大きくて、温かく……
この手を手放さなくてはならないことに、少しだけ未練を感じた。